職場におけるメンタルヘルスの現状
平成25年の労働者健康状況調査において、強い不安や悩み、ストレスを感じる労働者は約6割にのぼっており、うつ病等の精神障害を理由とする労災支給件数も増加しています。また、2007年には、精神疾患による労災の申請が身体的疾患の申請を上回るなど、現在の労働環境の悪化は深刻なものになりつつあります。
それを受け、平成23年12月には、精神障害の労災認定基準が新たに定まりました。
平成25年度の結果を見ても、いまだ減少傾向にありません。
メンタルヘルスの不調による労働力損失の大きい中小企業経営者にとって、労働者のメンタルヘルスへの対策が無視できない状況となってきました。
精神障害の労災状況
区分 | 平成21年度 | 平成22年度 | 平成23年度 | 平成24年度 | 平成25年度 | |
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精神障害 | 請求件数 | 1136 | 1181 | 1272 | 1257 | 1409 |
決定件数 | 852 | 1061 | 1072 | 1217 | 1193 | |
うち支給決定件数 認定率 |
852 27.50% |
1061 38.20% |
1072 30% |
1217 39% |
1193 36.50% |
|
うち自殺 (未遂含む) |
請求件数 | 157 | 171 | 202 | 169 | 177 |
決定件数 うち支給決定件数 |
140 45% |
170 38.20% |
176 37.50% |
203 45.80% |
157 40.10% |
精神障害の請求件数の多い業種(中分類の上位15業種)
区分 | 業種(大分類) | 業種(中分類) | 請求件数 |
1 | 医療・福祉 | 社会保険・社会福祉・介護事業 | 119 |
2 | 医療・福祉 | 医療業 | 96 |
3 | 運輸業・郵便業 | 道路貨物運送業 | 73 |
4 | 情報通信業 | 情報サービス業 | 56 |
5 | 卸売業・小売業 | その他の小売業 | 53 |
6 | サービス業(他に分類されないもの) | その他のサービス業 | 51 |
7 | 宿泊業・飲食サービス業 | 飲食業 | 44 |
8 | 製造業 | 輸送用機械具製造業 | 42 |
9 | 製造業 | 食品製造業 | 41 |
10 | 建設業 | 総合工事業 | 39 |
11 | サービス業(他に分類されないもの) | その他のサービス業 | 37 |
12 | 運輸業・郵便業 | 道路旅客運送業 | 35 |
13 | 卸売業・小売業 | 各種商品小売業 | 34 |
14 | 建設業 | 設備工事業 | 29 |
14 | 学術研究・専門・技術サービス業 | 専門サービス業(その他に分類されないもの) | 29 |
精神障害の支給決定件数の多い業種(中分類の上位15業種)
区分 | 業種(大分類) | 業種(中分類) | 請求件数 |
1 | 医療・福祉 | 社会保険・社会福祉・介護事業 | 32 |
2 | 運輸業・郵便業 | 道路貨物運送業 | 24 |
3 | 医療・福祉 | 医療業 | 22 |
4 | サービス業(他に分類されないもの) | その他の事業サービス業 | 20 |
5 | 建設業 | 総合工事業 | 19 |
6 | 情報通信業 | 情報サービス業 | 18 |
7 | 宿泊業・飲食サービス業 | 飲食業 | 17 |
8 | 卸売業・小売業 | その他の小売業 | 14 |
9 | 卸売業・小売業 | 飲食小売業 | 13 |
10 | 学術研究・専門・技術サービス業 | 専門サービス業(その他に分類されないもの) | 12 |
11 | 製造業 | 輸送用機械具製造業 | 11 |
11 | 卸売業・小売業 | 各種商品小売業 | 11 |
11 | 建設業 | 設備工事業 | 11 |
14 | 製造業 | 科学工事 | 10 |
14 | 運輸業・郵便業 | 道路旅客運送業 | 10 |
14 | 金融業・保険業 | 保険業(保険媒介代理業・保険サービル業) | 10 |
長時間労働による過重労働とメンタルヘルスの管理
職場における労働者の安全と健康の確保のため、長時間労働者への医師による面接指導が義務付けられた点です。
長時間の労働により労働者の心身に疲労が蓄積されると、健康障害の発症リスクが高まります。労災認定された自殺事案には、長時間労働であったものが多いことから、うつ病等のストレスが関係する精神疾患等の発症を予防するためにメンタルヘルス面への配慮は欠かせないものとなっています。
長時間労働者への医師による面接指導の実施(法第66条の8、第66条の9、第104条)
- 対象:すべての事業場
- 事業者は、労働者の週40時間を超える労働が1月当たり100時間を超え、かつ、疲労の蓄積が認められるときは、労働者の申出を受けて、医師による面接指導を行わなければなりません。(ただし、1か月以内に面接指導を受けた労働者等で、面接指導を受ける必要がないと医師が認めた者を除きます。)
- 時間の算定は、毎月1回以上、基準日を定めて行わなければなりません。
- 医師は、労働者の勤務の状況、疲労の蓄積の状況その他心身の状況(メンタルヘルス面も含みます。)について確認し、労働者本人に必要な指導を行います。
- 事業者は、面接指導を実施した労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師の意見を聴かなければなりません。
- 事業者は、医師の意見を勘案して、必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等の措置を講じるほか、医師の意見の衛生委員会等への報告その他の適切な措置を講じなければなりません。
- 事業者は、次の 1 または 2 に該当する労働者にも、面接指導を実施する、又は面接指導に準ずる措置を講じるよう努めなければなりません。
- 長時間の労働(週40時間を超える労働が1月当たり80時間を超えた場合)により疲労の蓄積が認められ、又は健康上の不安を有している労働者(申出を受けて実施)
事業場で定める基準に該当する労働者
~事業場で定める基準の例~- 週40時間を超える労働が1月当たり100時間を超えた労働者及び2~6か月間の平均で1月当たり80時間を超えた労働者全てに面接指導を実施する。
- 週40時間を超える労働が1月当たり80時間を超えた全ての労働者に、面接指導を実施する。
- 週40時間を超える労働が1月当たり45時間を超えた労働者で産業医が必要であると認めた者には、面接指導を実施する。
- 週40時間を超える労働が1月当たり45時間を超えた労働者に係る作業環境、労働時間等の情報を産業医に提出し、事業者が産業医から助言指導を受ける。
※面接指導の事務に従事した者には、その実施に関して守秘義務が課せられます。